三鳳GPT【kurt】

さて、第7回目の紹介は現在十段、この間までRランキング1位に君臨していたkurtさんです。三鳳界隈では「税さん」と呼ばれている有名人で、ツイッター(X)では「お母さん」という名前の人です。R5年9月現在、十段の在位数は14人ですが、なんとそのうちの3人はこの人のアカウントです。半端ないです。ツイートの内容を見ると「変な人」と思われがちですが、「会えば意外と普通」とのこと。ブログを期間限定でときどき更新されています。また、zkurtさんへの想いの強さはzkurt教団の最高幹部クラスです(笑)

さっそく成績を見てみましょう。

〇対戦数 3341戦(ちなみに全てのアカウント含めると1万試合を超えています)

〇安定段 8.0044(すごいですが、安定十段と安定九段アカも持っています。化物です。)

〇最高段位 十段(前述のとおり現十段アカウントを3つ所持、計3回到達しています。クレイジーです。)

〇最高R 2402(当然のように2400超え、別アカウントも含めると最高到達Rは2430です。)

アガリ率0.2893 放銃率0.1343 リーチ率0.2773 副露率0.2351

全体的に標準的な数値です。ややアガリ率が高く、イヤ~な粘り方をしてくる印象があります。また、ツモあがり率はやや低めで、出あがり主体の麻雀です。

〇打ち方の特徴

変則的バランス型。スタッツを見る限りお知らせさんと酷似していて、やや攻撃寄りのバランス型なんですが、教科書どおりのスタンダードな打ち方をするお知らせさんに対して、kurtさんはややひねった手順が多いです。大半の打牌はわりとオーソドックスですが、ときどき「ん?んん??!」みたいな手を打つことがあります。場況を細かく見てはじめて「あ、そういうことか」と分かる理由なので、知識の土台がないと見てもそれに気づくことができません。また、愚形リーチ拒否のシャンテン戻しや遠いところからの染め仕掛けなどもやや多めです。

〇最多対戦者 ガーネット(82戦) 常連のガーネットさんです(笑)以前三鳳GPTで紹介したプロの方で、冬灯さんなどと一緒に「三鳳の番人」を務めている方ですね。直対一覧を見てみると、zkurtさんのことを知り尽くしているあまり、zkurtさんに対して圧倒的な勝率を収めているのが面白いですね。

〇その他の情報

・ソックス♪さんなどとセットで打つことがあり、同年代。

・社会人で土日はほとんど打っていない

・増税の頃に「2000は2300(一本場)」をふざけて「2000は2160(消費税8%)」と言ったことから「税さん」と呼ばれるようになったとのこと。

・ツイッター(X)の交流はかなり広く、らんちぇすたーさん、れすこさん、青森のひよこさん、水沢柚乃さん、ソックスさん、りゅすくさん、おーくりーさんなど挙げればキリがありません。

アカウントを5つ所持しており、アクティブのkurtアカ以外に、三只眼(現十段、安定九段)と快適(現十段、安定十段)などがある

一見、zkurtさんのストーカーと間違えそうだが、プライベートで風呂に行ったり旅行に行ったりする関係とのこと。

〇ネタ画像

サブアカの対戦履歴ですが、0-4-23という前代未聞の超絶地獄モードにより、たった一日で約3600ptが消滅したというホラー画像です。想像しただけでも気が狂いそうです。

返しのコメント力には

定評があります

これまた分かりづらいですね(笑)

「あがってほしい2着目に対してはフルでラグ情報を開示して、あがってほしくないトップ目の親に対してはラグ情報をシャットアウトすべき局面である」ということを主張しています。内容が高度すぎて上級者でなければ見逃しちゃいますね。

もう一つ似たようなやつを紹介します

これに至っては上級者ですら理解するのに苦労するやつです。「ここで不自然に赤5sを手出しすることで、赤5sまたぎのテンパイから出あがりを狙うためにわざと455sや556sから赤を切って出あがりを狙ったふうに見せかけてピンズ待ちで討ち取る」という最上級のトリックプレイで、いわゆる「ハメ手のハメ手」というやつです。超上級者であれば「ははぁん・・・ソウズ待ちの出あがり狙いだな・・・いろいろ考えたようだが、私には通用しない。ピンズは通しだ。」とピンズをプッシュしてきますが、凡夫だと「なんか赤5sが出てきたぞ!だったら赤5sの周りは安全だ!ピンズ待ちバレバレだな!」と意図を汲み取れずに逆効果になるやつですね(笑)

〇対局紹介

長くなりましたが、いよいよ対局を見ていきたいと思います。まずはこれ↓

ラス目の仕掛け。当たり牌の8pが出ました。安いですが、あがって次局の親です。

・・・ん?ロンの声が聞こえません。なんかスルーして普通にツモってますね。アマゾンから荷物でも届いたんでしょうか。

山越しで即ダブ南出あがり3900点。これが回答です。説明すると、これは単純な高め狙いではありません。8pにラグを入れたことにより、読める打ち手だと77889などの形や8pがアタマのシャボ以外の待ちをイメージします。つまり生牌のダブ南であっても現時点では高確率で通ると読みます。下家は親にあがられたくないので”当たらないダブ南”を早切りしてサポートに回ります。それを逆手に取ったハメ手の一種です。こういう手の込んだトリックを使ってきます。じつに厄介です。下家が意図を理解していないと成立しないため、「同卓者への信頼」がないと実行することはできませんが、かわいそうなことに下家は”意図”を汲み取ってしまい、まんまと嵌められました。下家は誰かって?私ですが何か?(笑)

次はこれ。メンホンチートイのシャンテンですが、2s切り。前回のブログで紹介した「色消しギミック」の要素が少し混じった手順です。ドラが白で打点は足りているため、チートイドラ2や東を仕掛けての高め満貫狙いで広く受けつつ、染めも見ます。

9sをポンして打8s。8sを先に切り、3pを離して切ることによって染めの気配を消すよう細工しています。

染まっているようには全く見えませんが、ホンイツトイトイで倍満のアガリです。打点や受け入れの広さに加え、捨て牌にも気を使っていることが分かります。

別の局です。メンホンチートイのシャンテンから西をポン。通常なら鳴きませんが、親に少しでもプレッシャーを与えつつ最短で流しに行きます。・・・とここまではいいんですが、注目すべきはこの3s。ドラ2sを使い切りつつドラそばの危険な3sを先切りし、親流しの役牌バックの安手と見せかけて1sで満貫を討ち取る意図です。「色消しギミック」と「攻防一体先切りフェイク」の複合技です。こういうマニアックな手順も使いこなします。何度も言いますが、じつに厄介です。

次は守備意識が分かる局面です。なんとしても親流しをしたい南一局2本場。手順どおりに打てば1pですが、親が抜きドラ2枚の仕掛け。親はほぼテンパイしていないので現物の1pを残します。

親のテンパイ率は20%程度ですが、親の打点・自分の持ち点などを考慮するとテンパイ率50%くらいと見積もって対応すべき場面です。ここで1pをリリースします。

上家のリーチを受けて、親の通した5pのスジで打8p。ここですね。これは「親にあがられるくらいなら下家に満貫くらい打ってやむなし」の打牌です。親が5p強打したことでテンパイの疑いも出てきました。状況的に「親はテンパイしている」と仮定して打つ局面になりました。下家は宣言牌が自分で切っている西なのでチートイ否定、かつ4sの手出しがあるので染めでもありません。下家に東は通りそうですが、上家はタンキ選択で東待ちにした可能性があります。一方、8pはスジとはいえ下家に対して当たる可能性は十分あります。つまり、8pを先に切ったことから、おそらく下家に対してはある程度ガードを下げていると考えられます。「今の状況で何が最悪か」を考えて打ち回していることが分かります。シビアですね。

オーラスあがりトップです。5巡目に4p先切り。これも攻防一体先切りフェイクで、危険牌の4pを先に切って3面待ちを確定させ、役牌をポンした後に3pが出やすいようにする打牌です。状況的に他家はある程度真っすぐ来るので、どちらかというと迷彩効果よりも守備力を高めるほうに重点を置いた先切りです。これは以前三鳳GPTで紹介した灼眼のときさんなどが得意とする手順で、オーラスのトップ目などで特に有効なので覚えておきたいですね。

5連勝中の牌譜です。画像はごく普通の一打ではありますが、全体を通して「およそのメンツ候補が決まってからは余剰牌を優先的に早めに切って安全牌を残す傾向」が強いです。

これなんかも欲張ってホンイツを狙わずに安全かつ最短ルートで役牌ドラ3を狙いに行きます

次は、手作りの傾向が分かる局です。一旦6sを切りソウズを確定させた後に9sを引いて今度は打6p。ダイレクトに5pを引いたときだけは痛いですが、5sを引いたときにイッツー含みのシャンテンに組みなおせるのが魅力的です。また、5sを引いたときに4→2pと落とすことによって、捨て牌に6p→4p→2pが並び、5-8pが死角になるという隠れた効果もあります。手作りの傾向としては、シャンテン~テンパイ周辺で少しひねった手順を踏むことが多い印象です。

次は打点のある仕掛けに対する対応です。上家の白ドラ3確定の仕掛けに対して4巡目に打8s。かなり早めに見切って手をスリムにしていきます。

裏目の7sをツモって打2p。引き気味に進めます。

注目はここですね。上家はまだ2シャンテンですが、テンパイ率70%超えの捨て牌です。オリるべき場面です。普通は3s(または9s)を合わせるんですが、選んだのはなんと7p!上家の8p手出しを見て9pが切れなくなったものの7pは行けると判断し、ピンズの形を47779pから7→7→4と落として79pの形にし、ソウズを伸ばして粘る打牌です。一応チートイ目くらいは残しつつもほぼオリる打ち手が多い中、読みを入れつつ現実味のある形で粘ります。細かい部分ですが、緻密なところに気を配り、”楽をする”ことを選びません。

その結果がこの跳満です。この手順でこの跳満をあがれる打ち手はほとんどいないと断言できます。あの場面で”楽”をして3sや9sを切っていたらこの結果にたどり着くことはできません。苦しい状況でも楽をせずに読みを入れて踏み込むことがいかに重要か、ということですね。脱帽です。

最後は、愚形テンパイ時の対応と仕掛けの考え方が分かる場面です。ラス前のトップ目で曲げて5200のこの手をダマに取り、發をポンします。リーチをしてあがればほぼトップなので曲げも有力なのですが、ラス目の親とのケンカを避けてラス回避のほうに重きを置いた手順です。

發をポンして打3p。ここは赤5p切りで3p出あがりを狙いたくなりますが、この時点で赤5pを切ったからといって安全牌を探して切ってくる他家は1人もいません。であれば、2-5-8s変化を狙いつつ、6p引きのノベタン5-8pも同時に狙える赤5p待ちのほうがお得です。

2pを引き、ここで打赤5p。山に2枚生き濃厚かつ誰が掴んでも出るであろう2p待ちに切り替え、5pを勝負します。これなんかも「対面に放銃してもラスはほぼ回避できるし、親で取り返せばいいだけのこと」という理由で押します。さきほどの場面もそうでしたが、南場の状況判断が的確であるという印象を受けました。

【まとめ】

今回、牌譜をいくつか見て感じたことは、「”妥協”という概念を排除し、”こだわり”に特化させた麻雀」ということです。「麻雀に絶対はない、正解不正解もない」とよく言われますが、彼の麻雀は「本質的かつ絶対的な正解を追及する麻雀」だからこそ普通の人には理解ができないのかもしれません。牌譜を見て勉強するには、思考レベルの高さが要求されるためあまりおすすめはできませんが、トップクラスの打ち手であれば「卓上での会話」が成立する打ち手なので同卓すると楽しいと思います。ただし、同卓時はptをごっそり持っていかれますので授業料は高くつきそうですね(笑)

多趣味なのに、それらがことごとく実生活でほとんど役立っていないという事実に気づいてしまったペンギン♂
一部の人にしか刺さらないニッチな情報や雑感を「B型目線」で書いてます♪

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コメント

  1. より:

    こんばんは、税です。
    数ある打ち手の中から
    わざわざ紹介してくださってありがとうございます。

    汲み取ってほしい打牌の意図まで、細かいところまで拾っていただきうれしく思います。
    勝手読みとか、例え読み違えて事故っても
    理由をつけて切り開く麻雀の面白さも自分の麻雀の面白さだと思います、笑

    天鳳三麻に少しでも恩返しができるようにという気持ちがずっとあるので
    許される環境の限りは、これからも現役で打っていきます。
    皆様どうかこれからも天鳳三麻をよろしくお願い致します…(宣伝)

    • ペン太 より:

      VIVANT最終回だというのに更新後1時間で閲覧が異様に伸びていたので、おそらく読者の方も税さんに興味があるのだと思います(笑)
      今までの6名の中では自分と打牌傾向が最も近かったので、牌譜検証していて面白かったです。
      これからも三鳳を盛り上げていきましょう!

  2. たっちゃん炎舞 より:

    zkurt十段のときに、快適,NUCO, 三只眼でスナイプしていたのが印象的でした。
    特にzkurt, 快適,神速の卓は見応えがありました。
    また、NELFでの0-4-23は伝説です。

    私のGPTもお待ちしております。

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