「手牌安定性理論」について

おひさしぶりです、ペン太です。今回は自作セオリーの『手牌安定性理論』について書いてみたいと思います。麻雀では押し引き、牌効率、リーチ・鳴き判断、読み、回し打ち・オリ技術、南場の状況判断など重要な要素がいくつかありますが、それらのベースとなるセオリーです。

そもそも麻雀において重要なのは”中盤力”であると言われています。つまり、シャンテン~テンパイ付近の他家と手がぶつかるタイミングの打ち回しです。中盤での選択は、成績にかなり強く影響しますが、その中盤を迎えたときに有利な選択ができるように手牌を整えておく技術が必要になってきます。そのメソッドとなるのが『手牌安定性理論』です。

ところで、「地獄モード」という言葉をご存じでしょうか。もとはといえばスロット用語ですが、麻雀の場合、「何をやっても無駄なレベルの貧運状態」のことです。

まあイメージとしてはこんな感じですかね(笑)

ほぼ全局クズ配牌で、たまに入った勝負手はあっさり流されるか、めくりあいで当たり牌を掴まされます。そしてその状態が何半荘も続きます。オカルトっぽいですが、間違いなく存在します。このモードの負けパターンとしては、

①手なりで進めてめくりあいに負けて放銃→点数がないので無理して押す→ラス

②手が入らないのでツモられて点数が減る→不利な押しをせざるを得なくなる→ラス

③理不尽ダマに刺さる→戦意喪失・疑心暗鬼になるor取り返すために前のめりになる→ラス

などいろいろなルートがありますが、いずれの場合も「押すべきでない手で冷静に引くことができていないこと」が主な敗因になっています。点数がなくて押さざるを得ないときにも「横移動による棚ボタ2着もあり得る」「引いた先にアガリが転がっているかもしれない」などの別の視点を持って冷静に対処できるかどうかがポイントです。もし冷静に対処することができれば、劣勢時でもフォームがブレることがなくなり、10戦に1戦くらいはラスを回避できるかもしれません。さて、ここです!

「10戦に1戦、ラスを2着にできたらどうなるか?」

例えば、1着3回、2着4回 ラス3回なら、平均順位2.00(安定七段)

それが、1着3回、2着5回 ラス2回なら、平均順位1.90(安定十段)

つまり、安定七段の打ち手が10戦に1戦ラス回避できるようになれば安定十段になれるということです。安定段を上げるのに必要なことは、「超ファインプレイではなく、当たり前の我慢を継続できること」というのがおそらく正解です。細かい牌効率や押し引きも重要ですが、もっと重要なのはむしろその前段階の手牌構成力にあります。大事なことなのでもう一度言うと、そのためのメソッドが「手牌安定性理論」です。

今回はこの理論のコアな部分だけ紹介していきます。

★クズ手の対応

これがこの理論の”核”の部分です。「三麻はどんなクズ手でもリーチしてツモればそれなりの打点になりやすいので、ある程度真っすぐ手を進めるべき」という考え方が主流です。しかし、三鳳レベルでは周りのミスが極端に少なくなるため、ほとんどの場合は後手を引かされてベタオリになるため、手牌を絞って進めた方が中盤以降の手組みに余裕ができ、間違いも少なくなります。では、そうするためにはどうしたら良いんでしょうか。

1、字牌は絞る

アガリ目が十分ある場合は、真っすぐ手を進めます。不要な字牌はガンガン切り、概ね自己都合で打牌を選択すべきです。ただし、手牌が遅い場合は逆です。相対的にスピードが遅い場合は展開を遅くする必要があります。クズ手のときに固く打つことによって大物手を阻止したり、イージーな加点をされにくくなり、また、再戦時に軽い仕掛けをされにくくなったりします。字牌が上手く処理できたら攻め、処理しづらくなったときは引きます。

2、先切りをしてでもスリムに構える

クズ手はほとんどの場合あがれないので、目先の効率よりも守備力を重視します。裏目を引いても、どっちにしてもあがり目は薄いのでそこまでの損失にはなりません。もし首尾よくテンパイしたときには外スジ待ちでリーチしたり、ダマにすることで、本手のときに他家を下ろしやすくなったり、他家が勝手読みで警戒してくれやすくなる、という隠れた効果もあります。なお、先切りで注意したいのが、「手役の可能性を残しながら、うれしくない入り目を拒否するような先切り」を心掛け、打点ルートは残すのがポイントになります。

3、安全性を確保しつつ打点を見る

ここは特に重要です。遅い手はそもそも先手を取るのが難しいので、目先のテンパイスピードを追っても意味が薄いです。早い手を遅くして打点を見るのはリスクを伴いますが、もともと遅い手を遅くて高い手にする場合はリスクよりもメリットのほうが大きいです。なので、安全な字牌を抱えてホンイツを狙うとか、赤やドラを残しつつ安全にチートイを狙う、といった手牌構成にします。「安さで勝てないならクオリティで勝負」はビジネスでもよく出てくる考え方ですが、「速さで勝てないなら打点と安全性で対抗」ということです。

4、他家の手牌進行を見極める

この読み技術も重要です。危険牌を先切りできるかどうかなどの判断で多用するため、生命線でもあります。慣れればパッと見てシャンテンやテンパイは7~8割程度は読めるようになりますが、説明が難しいので、後ほど実戦で取り上げます。

5、目先のイージーな理由で鳴かない

「2枚目の役牌が出たので渋々ポンして愚形+愚形の2600点のシャンテンに取る」みたいなやつです。あくまでも「間に合わないから打点と安全性を確保した手牌に構え、失点を最小限に抑えることが本来の目的」なので、中途半端に間に合わそうとするのは間違いのもとです。もし、鳴いた方が局収支が高い場合でも同様です。局収支とは「汎用ケースの平均値」なので、例えば抜きドラ2枚のシャンテンがいる場合などは「平均的な局面」ではありません。「リスクのほうが高い状況」という確定要素があるため、数字どおりの結果にはなりません。また、三麻はリーチによる上振れが大きいため、四麻と同様の統計数値を適用することもできません。なので、明確に他家にアドバンテージがある状況ではアガリ目が薄くなろうともアガリを急がずに、失点を減らす方向性で進めるのが無難です。

6、放銃レッドゾーンはほぼ無条件に引く

①抜きドラ1枚以上の親リーチor南場で点差のあるラス目の親リーチ、②抜きドラが2枚以上のテンパイ気配、③3ハン以上がほぼ確定している仕掛け、④色が余った満貫以上の染め手、⑤点差のあるトップ目のときの5つが主な「放銃レッドゾーン」です。この場合だけは無条件に引きます。押しのリターンが十分にあるときのみ攻めてOKですが、その場合以外は無条件に放銃を避けたほうが間違いが少なくなります。アガリ逃しによる取りこぼしよりも放銃しないことのメリットの方が大きいので、余程自信がない限りは素直に”引き”安定です。

7、勝負できる手牌に変化したときにはモードチェンジ

①勝負できる手のとき、または勝負できる手牌になったときには、自分が打てる最高の手順で真っすぐ打つ②手順ミスした場合は反省し、手順をアップデートすること③勝負負けしても後悔せずに、勝負ラインを曲げないことの3点がポイントです。

以上7点が主な要素です。勝負手を成就させるために牌効率があり、勝負手とそうでない手を見極めるために押し引きが存在し、それらの精度を高めるために読みの技術が必要になりますが、手牌構成力を上げるためにはこれらの基本能力の向上が必要不可欠です。一方でそれらの基本能力のベースになるのが手牌構成力なので、基本能力は問題ないのに成績が良くならない人は、手牌構成に問題がある(=決戦時の手牌の構え方に問題がある)可能性が高いです。

さて、ここまであーだこーだ説明しましたが、イメージしにくいと思うので、最後に具体的に実戦譜を取り上げてみたいと思います。いつものようにペン太師匠の実戦譜を採用します(笑)

★東一局 西家

開局抜きドラ2枚の上家が仕掛け。この手牌から5巡目に打6p。リーのみを拒否し、三暗刻やドラ8s引き以外勝負しない構えを取り、スリムに受けます。基本的に開局時は真っすぐ手なりで進めるのがセオリーですが、3ハン以上が確定している仕掛けがいる場合は対応します。

すぐさま親リーが入り、上家のアガリで決着。結果的に上家が6pを通してくれていますが、6pが通っていない場合でも、先切りのおかげでテンパイしたら7sを勝負できる形になっている点に注目。場に対応したことで勝負できる回数を増やすことに成功しています。

★東二局 南家

6巡目打5p。パッと見、親がドラ1以上のシャンテンなので先に5pを払います。

この局は対面の跳ツモ。まだ我慢タイムです。

東3局 親 

親とはいえ、2軒の仕掛けにドラの中を引いた時点でほぼキブです。一応中を重ねての押し返しを狙いますが、イッツーを崩して安全に打ちまわし、勝負できる形になったとき以外はオリ安定です。結果は上家の700-1300ツモで親が流れます。

★南一局 西家

親がドラカン即曲げ。この時点で放銃レッドゾーンです。押し返し条件は、跳満確定良形以上かつ当たり牌をある程度ガードした手牌で放銃率15%程度の牌を1枚切ることがギリギリ許されるかどうか・・・といったラインです(体感ですが、そのくらいハードルが高いです)。なのでほぼ無条件にオリが正解です。山を見てのとおり、ツモられれば12000点オールなんですが、放銃したら95%くらいラスなのでオリるしかありません。

もちろんこんな東が勝負できるわけありません。

ここですね。回した結果、倍満確定の2種待ちテンパイです。対面は6p→中ツモ切り→1p曲げなので、2pがトイツのソウズ両面、または2pと何かのシャボ待ちが本線でしたが、2pが通ったため3pトイツのソウズ両面または3pと何かのシャボが濃厚になってきました。ピンズは3p(シャボ)、5-8p、ソウズは3~9sまでのスジ4本で、9sの危険度は15~20%といった感じですね。待ち牌は4p残り1~2枚、3pが1~2枚で残り平均2~3枚です。①倍満確定②アガリ牌がまだ2~3枚残っている③危険度15~20%④危険牌の3p、5-8p及びソウズの真ん中を計11枚使い切り⑤ラス目でアガリの価値が高い点数状況という5つの要素を考慮すると・・・

ここで勝負!ドンピシャの手牌で満を持してこの半荘はじめての勝負に出ます。ダマでも良いんですが、3pはどうせ切れる牌ではないので、この形のまま火力MAXで押します。

結果は4p一発ツモの倍満。ピンポイントをモノにします。く~っ、師匠、しびれますぅ!!!”勝負できる手になったらモードチェンジ”ですね!

南2局 南家

ペン太師匠は慢心しません。アガったとはいえまだ薄氷のトップ目。4巡目打9p。重いピンズの上にメスを入れ、字牌を絞りつつタンピンに向かいます。字牌を絞りつつ、打点ルートを残した先切りで手を進めているのが分かります。

5巡目打6p・・・ん?6p?!なんですかこの打牌は(笑)・・・おっとっと、対面の捨て牌よく見たらシャンテンですね。冷静に考えると、この苦しい形でドラ含む生牌の字牌4枚を切ってアガりを見るのはいくらなんでも無謀すぎです。対面が攻撃スタンバイ状態、かつ、親もある程度前に出てくる局面なので、現時点で対面の危険牌をピンポイント処理しつつ、字牌も絞る構えです。なんて冷静なんだ・・・。

対面の手出しの中を見て今度は現物の7s。上家はたぶん良くてシャンテンですが、対面はテンパイまであるのでここからは一気にガード体制に入ります。

案の定、対面がリーチ。そして上家もポンで応戦します。完全に場が沸騰してきましたが、事前準備のおかげもあって、わりと余裕を持って守れる手牌構成になっています。地味ですが、このあたりの展開予想・手牌構成はファインプレイです。

満貫横移動でオーラスへ・・・

★オーラス 親

第一打1p。普通は西から切るんですが、これまたすごいところから払っています。ちなみに点数状況的にアガリはマストではなく、「テンパイ流局でもOK」です。どっちに放銃してもほぼ即ラスにはなりませんが、アガリを阻止するほうに重点を置いているのでしょうか。

上家が1mカン打7s。シャンテンですね。対面はまだ1~2シャンテンですが、ここで生牌の南を勝負し、おそらくシャンテンである上家の安全牌の1pを抱えます。

9巡目打2s。これもちょっと変な打牌ですが、何故2sなんでしょうか。上家はなんとテンパイしているんですが、基本的にテンパイしたら曲げる局面(しかも1mカンで役がなさそう)なので、ノーテンと読みます。対面は5s手出しでテンパイ気配がプンプンです。これは対面の危険牌の1sを止めてスジの2sを切って粘りつつテンパイを目指す構えですね。

さらに1sを引いて打2s。イッツーもタンヤオも完全に捨て、両面を壊して露骨に1sを止めつつシャンテンを維持します。う~ん固い。

12巡目に上家の8sをポンして形テン。あと5巡耐えれば勝ち、というところまでこぎつけました。

・・・まぁそう簡単に勝てるわけないですよね。上家から当然のようにツモ切りリーチが入ります。すぐにアガリ牌の1sをツモリますが、もちろん役なしなのであがれません。テンパイ維持打牌は暗刻の1sを選択。対面には危険ですが、跳満放銃しても2着なので、テンパイ維持しやすいよう構えます。

テンパイからテンパイへ。今度は役アリのノベタン3-6sに受け変えつつ流局を待ちます。

最終打牌は完全安全牌の中。全員テンパイで終局です。しかし、本当にテンパイ終局という紙一重をギリギリで通すとは驚きですね・・・

【まとめ】

結果だけ見ると、倍満一撃以外何もせずのトップ。しかし、じつは水面下で「手牌安定性理論」に基づいた”細工”を随所で実践していたのが分かります。ある意味、「無駄な放銃をせず、甘い牌を打たず、勝負所のみ攻める」という理想的な勝ち方とも言えます。ただ数字だけを追い求めて効率的に打つだけでなく、このような徹底した事前準備によってしのいで勝つという麻雀もあるので、興味のある方はこの「手牌安定性理論」、実践してみてはいかがでしょうか♪

多趣味なのに、それらがことごとく実生活でほとんど役立っていないという事実に気づいてしまったペンギン♂
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