南場の状況判断について

こんにちは、ペン太です。今回は南場の状況判断についてです。「基礎的重要項目」のカテゴリーに分類される3大要素として、牌効率、押し引き、鳴き・リーチ判断があります。中級者まではこの3つを中心に学習していきます。一方、「実戦的重要項目」のカテゴリーには読み、手牌構成力、南場の状況判断の3大要素があり、これらはどちらかというと座学によるインプットよりも実戦でのアウトプットの反復により身につくという類の技術です。その3大要素の中でも南場の状況判断はわりとシステム化できる部分が多く、かつ、成績影響度も高い項目なので優先して習得しておきたい項目といえます。

例えば、前々回のブログで紹介したスタッツ比較の話でいうと、ソックス♪さんは平均局収支がなんとマイナス(笑)なのですが、ほぼ安定八段の成績を残しています。こればどういうことかというと、「的確な状況判断力で無駄なくトップを取っている」ということです。トップ目であれば必要最低限の打点で最速手順を選択して着順をキープし、ラス回避のときも同様に最低限のアクションで2着を死守しているためです。つまり、勝つためには必要以上の収支は不要で、「100点でも多い状態で終局するための戦略が重要である」ということを証明しているといえます。

ではさっそく説明していきたいと思います。

1 着順について

オーラスの着順アップ率、ダウン率はデータによるといずれも平均20~25%です。ここでは着順ダウン率(AL逆転され率)に注目します。例えばこの値が20%の打ち手の場合、約80%はオーラス開始時点の着順(またはそれ以上)で終局しているということです。すなわち、オーラスをトップで迎える回数を増やせばトップ率が高くなり、2着で迎える回数を増やせば自然とラス率は下がるということです。言い換えれば、南2局の着順調整が重要ということです。まずはここに気づくことが重要です。

2 逆転条件について

「親のツモあがりはツモ値の3倍、子のツモあがりはツモ値の4倍、子のツモあがり(対親)はツモ値の5倍差が縮まる」

まずはこれを暗記します。どういうことかというと、

親の4000オールは4000点✕3倍=12000点なので、子との差は12000点差が縮まります。

子の1300・2600ツモのとき、子に対しては1300点✕4倍=5200点なので、5200点差が縮まります。

子の1000・2000ツモのとき、親に対しては1000点✕5倍=5000点なので、親とは5000点差が縮まります。

これを機械的に覚えることでオーラスの逆転条件の計算速度が上がります。なお、出あがりは単純に2倍するだけです。親の満ツモ12000、跳ツモ18000、倍ツモ24000と、子の満ツモ8000(対親10000)、跳ツモ12000(対親15000)、倍ツモ16000(対親20000)だけは即答できるようにしておくと便利です。

3 オーラス点差条件Tier表

これが今回最も重要な項目です。「オーラス開始時点の点数を調整する技術」が南場の状況判断の核となる技術です。では以下の表をご覧ください。

★オーラス親の場合

S オーラス開始時点で2着に16100点差以上つけたトップ目

A オーラス開始時点で2着に10500点差以上つけたトップ目

B オーラス開始時点で2着に8100点差以上つけたトップ目

C オーラス開始時点で2着に3100点差以上つけたトップ目

D オーラス開始時点でラスに3100点差以上つけた2着目

★オーラス子の場合

S オーラス開始時点で2着に12100点差以上つけたトップ目

A オーラス開始時点で2着に8100点差以上つけたトップ目

B オーラス開始時点で2着に4100点差以上つけたトップ目

C オーラス開始時点でラスに3100点差以上つけた2着目

D オーラス開始時点で2着と500点差以内のラス目

理由は後で説明しますが、まずはこれを丸暗記します。そして狙うのは上記のうち「D」以上です。南2局開始時点でD以上であれば、Dを下回ってしまう選択は徹底的に回避します。たとえ役満でもオリを検討します。また、Aを確保できればかなりの勝率を確保できるため、無理してまでSは狙わなくてOKです(イージーに狙える場合のみ狙う)ラスの場合は、D以下を確定させるアガリを拾うくらいなら親の連荘を放置してもう1人が落ちてきてくれるのを待った方がいい局面も多いです。

少しだけかいつまんで説明すると、

A オーラス開始時点”親”で2着に10500点差以上つけたトップ目

子の満貫ツモ・5200直撃耐え調整

B オーラス開始時点で2着に4100点差以上つけたトップ目

子の3900横移動、2000直撃、1000・2000ツモ、ノーテン終了耐え調整

D オーラス開始時点で2着と500点差以内のラス目

子の700・1300ツモ、1000点横移動、テンパイで2着入れ替わり調整

という感じでそれぞれ理由があります。ただし、打っていればなぜその点差が必要なのかは自然と理解できるようになるため理由まで暗記する必要はありません。

4 ニンジンの法則

ニンジンって何のことだかさっぱりですね(笑)要するに”エサ”がぶら下がっているかどうかで他家の押し引き傾向を探る技術のことです。

・あがらないとラスになるラス目➡ほぼ全押しするものとして計算

・あがりトップかつほぼラス落ちしない2着以上➡ほぼ最速かつ全押しするものとして計算

・あがりトップかつラス落ちリスクがある2着以上➡ラス落ちの可能性がある押しはしないが全力であがりを取りにくる

・満直されない限りラス落ちはしない2着目➡染め手と抜きドラ2枚以上のダマテン以外はあまり警戒しない

・あがってもトップが厳しい2着目➡ラス回避のためラス目のダマテンすら警戒

以上のように、”ニンジン”が目の前にぶら下がっているかどうかによって他家の打牌傾向が極めて読みやすくなります。それを利用して現実的な逆転条件を目指します。

5 まくり条件達成可能性理論

ではフォロワーさんの画像を例に説明します。対面から跳満直撃で2着、下家から跳満直撃で西入の局面でダマ跳確定・高目ダマ倍のテンパイが入ります。1pツモって一発か裏でトリプルなので、その場合も条件を満たしますが、リーチとダマどちらが有利なのでしょうか。

〇ダマテン3面待ちをどちらかが切ればOK

〇リーチして5回以内にツモアガリし、かつ偶発役に期待する

並べてみると一目で分かりますが、難易度の差は段違いでダマテンのほうが有利です。この単純な難易度比較が「まくり達成可能性理論」の核の部分です。迷った場合は、難易度の比較のみで判断すると間違いが少なくなります。では、その他の条件も考察してみます。ここでニンジンの法則を使って他家の思考を考えてみると、対面の親は満貫あがればトップでシャンテンっぽい捨て牌なのでこちらのダマ跳直撃の警戒はピンズが余らない限りしないことが多いです。警戒するのは自分のアガリ目が薄い場合のみです。下家はトップ目ですが、親に満貫をあがられると2着落ちなのである程度前に出たい局面です。ラス目に跳満を放銃してもラスが確定するわけではないので、こちらも手が入っていればピンズが余るまでは押してくる可能性が高いです。なのでピンズが余ってない状態ではダマテンが明らかに有利です。ピンズが余っている場合は、対面の親にニンジンがぶらさがっていない場合はリーチ、ぶら下がっている場合はダマ続行がわずかに有利という認識です。条件の難易度+ニンジンのサイズによって着手を考えることが重要となります。余談ですが、この手でツモあがってしまった場合は打2sでテンパイ崩してメンチンかソウズ単騎直撃狙いに切り替えますが、そのルートも頭の中でイメージしておくようにしておきたいですね。

6 オーラストップ目の手牌Tier表

これも重要です。以下の表をご覧ください。

S 安全牌2枚以上確保の面前役ありダマ

A 安全牌2枚以上確保の仕掛け

B 安全牌が1枚以下の面前役ありダマ

C 安全牌が1枚以下の仕掛け

D リーチ

ラス落ちのリスクがある場合はA以上を狙います。ただし、ラス落ちのリスクがある場合でも、3面待ちリーチ、差し込みが期待できる、何もしなくてもラスになる可能性がある、ラス目の現物(真っすぐ来るから自分かラス目がアガリ牌をつかめば終了)などの条件がある場合は、DでもOKです。一方、ラス落ちのリスクがほぼない場合はDでOKです。ちなみに、点差があるトップ目の場合は放銃リスクのほうが大きいため、遠いバック仕掛けなどはしないほうがいいです。意外と下のほうの攻防で勝手に決着がついたりすることが多いです。

では最後に1つだけ実戦譜を上げてみます。

南2局の親で下家からリーチ。2s→9m→9mの切り出しなので、ドラ0~1枚のメンツ手(ピンフやタンヤオがついてるかも)リーチ濃厚です。おそらく満貫までの手です。ここであがってもオーラス時点でのTierA以上は確定せず、7700放銃ならTierD条件を下回ってしまうので、この手はオリ寄りです。目の前の局収支を追ってはいけません。とはいえ安全牌がないので、9p>4p>5sの順でしのいでいくイメージを頭に入れておきます。

リーチ後、下家が抜きドラをツモって抜き3枚になり、リーチツモドラ3が確定しました。ピンフ・タンヤオ・赤・裏などが1つくらいはあると思われるのでツモればほぼ跳満確定です。上家の手出し7pは明らかに不自然なのでメンツから抜いてオリているのが分かります。下家は良形の可能性が高く、ツモもそれなりに残っているためかなり危機的な状況です。さて、先ほどまでは放銃しなければTierD以上を確保できる可能性があったのですが、ほぼ跳満ツモ以上が確定した状況であれば、ツモられた場合でもTierD条件を下回ってしまいます。したがって、この状況ではTierD以下を回避するために押し寄りの判断となります。このあたりの微妙な判断が南場の状況判断の難しいところでもあります。

【まとめ】

南場の状況判断というとオーラスをイメージすることが多いと思いますが、じつは南2局がかなり重要です。南1局から調整に入っておくとなお万全です。南場は詰将棋です。目の前の局収支にとらわれず、「半荘単位の押し引き」を意識すれば成績の安定感がワンランクアップしますよ♪

多趣味なのに、それらがことごとく実生活でほとんど役立っていないという事実に気づいてしまったペンギン♂
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