”Mリーグでの第一打8p”の件について

こんにちは、ペン太です。昨日くらいからツイッター(X)のタイムラインが騒がしいので調べてみると、Mリーグで鈴木プロが図のような手牌から第一打に8pを切ったのが原因のようです。

理牌カンペキなのでつまみ間違えた可能性は0%ですね(笑)まぁそれはさておき、西家で表示牌が發なので、發以外に切る牌はありません。發一択です。100人いたら150人が發を切る手です。そしてこの手から、こともあろうに鈴木プロが8pを切ったことで炎上――というのが事件の概要です。

「プロなのにこれはありえない」「舐めプだろ」「完全な悪手」「これを番組で擁護してるのもキモイ」という批判が多数ある一方、「完全な悪手とは思えない」など擁護する声も一部上がっていました。

結論を言うと、これは500%悪手です。明確に悪手と断言できます。擁護の余地すらありません。事実としてはそう結論づける案件ですが、自分の見解は全く別でした。「この人は本物のプロだな」という認識と「自分と番組との考え方の違い」という2点、これが自分がこの件について感じたことです。少々ズバっと書きますがご容赦ください。

まず、「雀鬼流」について知っておく必要があります。今から30年以上前に、20年間無敗の元裏プロ・桜井章一氏が「雀鬼会」という競技団体を設立します。その雀鬼会の麻雀は「雀鬼流」と呼ばれ、第一打の字牌(ドラ)切り、ノーテン時のドラ切り、明カン、即ヒッカケリーチなどを原則禁止としています。また、南場は点棒状況によってアガリの制限があります(意味のないアガリ、1人浮きを助長するアガリはゲームを壊すので禁止)。これらの制約は「対局者に迷惑をかけず、責任感のある気持ちのいい麻雀を打つこと」というコンセプトに集約されます。ただ、第一打の字牌切り禁止に関しては、「安易に字牌を切らないことで構想力を身につける」という目的のため決められたルールであり、桜井氏が現役時代にそれを必ず守っていたわけではありません。いわゆる”修行の一環としての決め”です。なぜここまで詳しいのかって?自分も昔、出版された関係書籍やビデオはほとんど購入し、何度も見返し、数年間雀鬼流の決めを守って打っていたからです(笑)

ここで鈴木プロのツイートを見てみましょう。

憧れの会長に握手してもらい激励されています。この写真を見てピンときました。

「お世話になった会長に恩返しがしたい。雀鬼会を背負ってMリーグでプロとして舞台に上がり、会長に教わった打ち方が通用すると証明したい。」

おそらく鈴木プロはこう考えているのではないのかと。少なくとも自分だったら同じように考えます。これは周りから何を言われようと、”決め”を曲げることなく、自分の麻雀を貫くということです。だから、第一打に字牌切りしなかったことで負けたとしても言い訳せずに「自分の実力が足りなかっただけ」と思っているはずです。「ハンデがあったとしても、圧倒的な実力を身につけて制約すら乗り越えてぶっちぎりで勝つ」という心構えです。

また、対局ではこんなシーンも。南場のトップ目から3万点以上差が開いたラス目のリーチに対して、4pとドラ3mを勝負して追っかけリーチを打ち、リーチ後に赤5mを掴んで満貫を放銃してしまいます。この状況なら軽々しく押すべきではないですし、ましてやリーチなど打つべきではありません。ですが、雀鬼流は「自分勝手な理由でオリたり、保身のために日和ったりすること」も禁止しています。明らかに損ですが、「この打ち方で勝って会長に恩返しする」という決意の表れです。

さて、ここまで読んでお気づきとは思いますが、もはやこれは”2進法”で語ることができる問題ではありません。第一打だけを切り取って打牌を議論することがいかに「思慮と経験の浅い薄っぺらい行為であるか」を思い知らされます。鈴木プロは、ここまでに書いたことを踏まえつつ「最短で満貫クラスの手を作る」という雀鬼流の基本的思考から打8pという結論を導いたと考えられます。これだけ周りのお世話になった人に感謝し、麻雀に対して真摯に向き合い、情熱を持って取り組む人間を批判することは自分は絶対にできません。

ぐだぐだ書きましたが、ここまでが「この人は本物のプロだな」と感じた理由です。

ここからは、ビジネス的な話にもなりますので興味のある方のみお付き合いください。「自分と番組との考え方の違い」についてです。

まず麻雀界は特にここ15年くらいで急激に業界全体のレベルが上がっています。AIの進化や統計に基づいた戦術書がどんどん出版され、オンライン麻雀での牌譜検証やデータ解析なども一般的になり、「運や流れを読むギャンブル」から「知的な確率ゲー」へと急激に変化してきています。その一方で、トップ層のレベルは上がったものの、未だに「流れ」といった曖昧なものを信じる層も根強く存在します。Mリーグのような不特定多数を対象とした番組は、その両方の層に対して刺さるような情報を提供する必要があります。つまり、上級層の知的好奇心や優越感を満たしつつ、初級~中級層でも分かりやすく興味を持ちやすくするためのメソッドが必要となります。

例えば、Mリーグの参加条件に「天鳳最低2000試合以上」などの条件を付け、客観的な対戦データを数値化します。最高到達段位やR、安定段位のほか、和了率などの各種データを全て公開するとともに独自にステータス表を作成し、総合数値を「戦闘力」的なステータスとして、対局前に公開します。もちろん、その打ち手のこれまでのタイトル受賞歴、打ち方の特徴、麻雀に関する経歴と活動内容、師事するプロ、エピソードなども交えて全公開です。そして、それを解説者が頭に叩きこみ、事前に「批判許可」をもらって臨みます。解説時には、甘い打牌に対して枚数や数値などに言及しつつ明確にダメ出しをし、その一方で、”打牌に対する直接的な部分以外”でフォローを入れます。「今のは打牌は甘いですね。受け入れ枚数が〇枚減って、平均期待順位が〇〇くらい下がる打牌です。ただ、この人は天鳳5000試合安定八段というすごい実績を残している打ち手で、上家の捨て牌を読んであえてこの打牌を選んでいる可能性があります。もしそうだとしたら、平面的な期待値は下がりますが、上家に対するメタ戦術としては成立しますね。」みたいな感じのフォローです。そう解説することによって、上級者の知的好奇心や優越感を満たして観る気にさせつつ、初級~中級者にも分かりやすくその打牌の意味を伝えて麻雀に対する興味や奥深さを伝えることができます。麻雀界の発展のためには、「麻雀界の技術向上」と「新規層の参入」が必要不可欠ですが、もし誤打を直接的に擁護してしまうと、麻雀界の技術向上の妨げになるため、打ち手(プロ)にとっては酷ですがそれはすべきではありません。また、解説者が明確にダメ出しすることでSNSによる過剰な炎上も緩和できます。

麻雀の普及・発展をコンセプトにする番組であれば、一流レベルの技術公開とエンタメ性を両立させつつ、誰もが興味を持てる番組プロデュースをすべきです。そのために、解説者には「打ち手との関係作り」「高い技術と知識」「言語化能力」が求められます。もし、そのような有能な解説者がいればこの番組の人気はもっと高まり、より一層の麻雀の普及・発展につながるはずです。

長々と書きましたが、結局のところ、解説者が視聴者への橋渡しとして非常に重要な役割を担っていて、番組を良くするも悪くするも解説次第なところがあります。プロデューサーがそのことを認識し、麻雀の普及・発展というコンセプトやビジネスに対して理解のある解説者を立てることができれば、もっと良い番組になるはずです。

最後に、この鈴木プロの観戦記です↓

鈴木大介が見せる世界、Mリーグに新たな風が吹き荒れる!【Mリーグ2023-24観戦記 9/18】担当記者 #江崎しんのすけ | キンマweb |『近代麻雀』の竹書房がおくる麻雀ニュース・情報サイト (kinmaweb.jp)

こういう記事も非常に重要です。麻雀の普及・認知向上のために会社を設立した方が執筆されていますが、こういう活動は麻雀界にとってはありがたいですね。

もし自分が観戦記を書く立場だったら、鈴木プロの雀鬼会との関わりや想いをもっと掘り下げて、記事にドキュメント性を持たせます。そうすることで「鈴木プロを応援したい!」という個人的なファン(視聴者)の獲得につながります。また、リーチ後に放銃した赤5mの件でも「展開に恵まれなかった」という表現ではなく、明確にセオリーに反した手順であることに言及しつつ、「それでも自分のスタイルを貫いた」という部分をクローズアップさせます。「新たな風が吹き荒れる!」というタイトルももう少し具体的に”第一打の8p”を匂わすキャッチーなタイトルにしたほうがより一層興味を引くと思います。当然ながら事前に本人に対する取材や許可は必要です。番組の解説もですが、観戦記事も読者に対して正確かつ具体的な情報を提供して技術向上に貢献しつつ、打ち手の技術的な部分以外の人間的な魅力も本人視点でしっかりと表現するような記事を書くようにするともっと良くなるのではないかと感じました。

【ペン太のコメント】

20年近く前に雀鬼様にお会いしたけど、ずいぶん年取られたみたいだね。でもなんとかご健在でよかった。

多趣味なのに、それらがことごとく実生活でほとんど役立っていないという事実に気づいてしまったペンギン♂
一部の人にしか刺さらないニッチな情報や雑感を「B型目線」で書いてます♪

ペン太をフォローする
麻雀
ペン太をフォローする
B型ですけど何か?

コメント